こころを病むということ

傷つくことと向き合うことが生きることの本質

複雑性PTSDという疾病名が、国際疾病分類(ICD-11)に記載され、2022年1月1日から正式に診断名として発効された、らしいです。この本を読みました。 『複雑性PTSDとは何か 四人の精神科医の座談会とエッセイ』(金剛出版2022年、飛鳥井望・神田橋條治・高木…

母といえど人間

前回は、相手の気持ちについて考えることができる力が「しつけ」によって伸びるというような話で終わりました。あれから多少気鬱に過ごしていました。私の母は、きょうだいげんかのときなどにそれぞれの言い分を聞いて仲裁するなどということは一切したこと…

思春期の外傷体験から起こる慢性うつ

以前、外傷的な育ちとメンタライゼーションについて書きました(→過去記事)。今回はその第2弾ということになります。この本を読みました。 『メンタライゼーションを学ぼう』(池田暁史、日本評論社2021年) メンタライゼーションを学ぼう 作者:池田暁史 日…

レジリエンスってそういうことでしょ

このところ発達性トラウマに”はまって”しまって少ししんどい感じになっていたのですが、ここ1か月で 抜けた! という感じになっています。 どういう風に変化があったのかを順序だてて整理したいと思います。書いておかないとこの感覚を忘れてしまいそうなの…

ほんとうのやすらぎを知らない人

前の記事で取り上げた『レジリエンスを育む―ポリヴェーガル理論による発達性トラウマの治癒』で、特に印象に残ったことがありました。 発達性トラウマを抱えた人は、自律神経系の自己調整の働きがうまく機能せず、いつも過剰な覚醒状態にあったり、逆に現実…

発達性トラウマで説明できるストレス性の病

以前紹介したポリヴェーガル理論に関して、『レジリエンスを育む』(キャシー・L・ケイン/ステファン・J・テレール、花丘ちぐさ・浅井咲子(訳)、岩崎学術出版社2019年)を読みました。 レジリエンスを育む―ポリヴェーガル理論による発達性トラウマの治癒 …

発達障害と愛着障害とメンタルの病の繋がり具合

数年前、私は、発達障害と愛着障害が別個に語られることに居心地の悪さを感じていました。当時、発達障害は生まれたときに決まっている性質のようなもので、愛着障害が育ち方で決まってくる性格のようなものと説明されていたと思います。どうも納得がいかな…

アレキシサイミアと外傷的育ち

前の記事では感情がわかりにくい私がそれに気づき、感情をほどく方法について書いてきました。どうなんでしょう。私は自分がどのくらい特殊な人間であるのかがよくわかりません。でも、広い世界にたった1人でこんな状態でいるとは思いません。よく似た状態に…

感情をほどく方法(2)

感情というと嬉しさとか悲しさとか憎しみとか辛さとかそういうものを思い浮かべがちですが、おっくうな感じとか迷いとか、困り感なんかも、感情です。 私はこういうのが日常的にわかりにくいみたいです。 なんとなく仕事が手につかなかったり、気が付くと考…

感情をほどく方法(1)

このところ元気になったということを書きましたが、腸が元気になったのと並行して、精神的にかなりパワーアップした感じがあります。自分の感覚としては、 固まってしまった感情をほどく方法がわかってきた という表現が近いです。 このブログでは以前から、…

くじけることと抑うつの関係

よく「くじけないで」というフレーズを聞きますが、 まさにその「くじける」状態で何年も生きてきたと思います。 くじけないためのガッツがなくなっていました。 ちなみに、ガッツの語源は内臓です。 はらわたに力が入らないと、人はくじけるのかもしれませ…

責任を取る覚悟

認定心理士の認定が下り、IDカードが送られてきました。 巷では、役に立たない資格とも言われているようですが、私にとっては意味があります。なんだろう、人間としての尊厳を取り戻したような、そんな感覚です。 いつの間にか、自分というものに自信を失っ…

トラウマが消える音楽CD

聴くだけでトラウマが消える音楽CDというのを見つけました。にわかに信じがたく、迷いましたが思い切って買ってみました。 心の傷を消す音楽CDブック (聴くだけで不安・心配・悲観がなくなる) 作者: 藤本昌樹, 出版社/メーカー: マキノ出版 発売日: 2018/0…

中高生の睡眠時間は8~10時間が望ましいと専門家は言っているけれど

10代の若者の睡眠時間を削ると、絶望感や自殺念慮が増える、という米国の研究があるのだそうです。前回紹介したこの本に出ていました。 望ましい睡眠時間は8時間から10時間なのだそうです。同じページに出ている調査では日本の高校生の半数以上が6時間以下の…

今回はいろいろまとめて近況です

近況その他というカテゴリーを設けてあるのですが、今回はいろいろまとめて近況を書きます。 今月末で学習塾講師をいったん辞めることになりました。この仕事のことや学習塾という業界のこと、最近の子どもをめぐる世相のことなど書きたいことはたくさんあっ…

かなり健康になってきました。振り返ると。

以前、半健康とは、というような記事を書きました。長い間、身心の不健康な状態を続けており、元気になることは遠い目標でしかなかったのですが、 最近、かなりいい調子です。 朝起きたら、10分ほど屋外を散歩。月に一度はヨガ教室に行く。義母の菜園を手伝…

外傷的な育ちというくくりで見える本質

なんだかすごい本に出会ってしまった気がしています。『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』(崔炯仁、星和書店2016)。 以前からこのブログでは連呼していますが、精神科の診断名は原因で分類されているわけではなくて、状態像の名前です。…

発達障害と気分障害と複雑性PTSDが同じフィールドで語られる日

お気づきのように、こちらのブログは発達障害をメインテーマとはしていません。 不登校を経験した息子は成人しましたし、彼についての詳細をここに書くことは避けなければならないでしょう。 私についても、自身の診断を気分変調性障害とし、それからの脱却…

こころと身体を一体として考えるきっかけとしての橋本病

先日、「橋本病」と診断されました。正確には、潜在性甲状腺機能低下症という位置づけで、甲状腺の働きが少し鈍っておりそれを刺激するホルモンが過剰ぎみ。自分の甲状腺に反応してしまう自己免疫抗体ができて甲状腺が炎症を起こしキメが荒くなっているとい…

世界の秩序感と健康

アーロン・アントノフスキーという人の考えた健康生成論と首尾一貫感覚(SOC:Sence of Coherence)というのを最近知りました。『健康の謎を解く ストレス対処と健康保持のメカニズム』(有信堂2001)。ストレスがあるから不健康になるという論法ではなく…

ヨーロッパ思想の「心身二元論」への誤解を解く

このところ「半健康」「不定愁訴」「慢性疼痛」「慢性疲労」などに関することをいろいろ調べていて、ひと月ほどでかなりいろんなことがわかってきました。ひとつ重大なことは、この病への理解が、いわゆる「心身二元論」の議論に引っかかってくるということ…

休むという処方箋

ところで。何日かしっかり休むことさえできたら治すことができる病気って多いんじゃないでしょうか。休む。気兼ねなく休む。 安心して、安全な場所で休む。さまざまな事情で休むことができない状況にあって、からだの不調を来たし、周囲に気を使いながらどう…

不定愁訴を医学的に説明する

このところ連続して、苦しい症状が長期間続くのに身体を調べても悪いとことがほどんど見つからない病気について書いています。 一つ前に紹介した本のタイトルに出てきた「不定愁訴」という言葉ですが、字義どおりに解釈すると、いろいろグズグズ言う、という…

心身二元論の落とし穴(2)

身体じゅう調べてもたいして悪いところが見つからないのに、それに比べて症状が大げさな患者をひとまとめにしてFSS(機能性身体症候群)、ということだと、良く似た病気がありました。 身体表現性障害からだに現れるこころの病気。精神科で扱う疾患の名前…

心身二元論の落とし穴(1)

一つ前の記事で半健康について研究したいと書き、宣言したからにはと勢いをつけて論文検索をやってみました。以前よりスムーズにいくつかの論文にアクセスすることができ、わりとすぐにこのキーワードにたどりつきました。 機能性身体症候群 Functional Soma…

自分を見つめることは、他者とつながること

しばらく更新できずにいました。 ひさびさの、「うつ」っぽい状態。「うつ」というのは、憂鬱な気持ちのことではありません。 感情の流れが滞り生命力が落ちていく状態です。 目の前の課題が大きな壁のように見えて到底達成できそうに思えず、調子に乗って予…

再び「悔しい」という感情について

駅伝の選手が走り終わった後に泣いている映像をテレビで見ました。 制限時間内にゴールできなかったために、次の走者が繰り上げスタートになってしまい、たすきを渡せなかったという場面でした。ああ、悔しいだろうなぁ。。。悔しさが私の身体に伝わってくる…

水面の天井を越える

2015年1月1日です。世間にはガラスの天井ということばがあるらしいです。キャリアを積もうと社会でがんばってきた女性たちの間では良く知られた言葉のようですが、私はそのようなものとは縁のない世界に生きてきました。ガラスの天井とは、「資質又は成果に…

身体が緩んで初めてわかる、人の気持ち

ほんの少しずつ、身体が緩んできました。腕だけ、肩だけ、背中だけ、わき腹だけ、という風に、その日に重たいと感じる場所に意識を集め、5秒ほど力をぐっと入れて、それから解放します。その場所が軽くなると、次ぎの場所が気になり始め、そこを緩めると、…

ファイナル・コモン・パスウエイという発想で変わるこころと身体の関係

脳の炎症、と聞いて思い出した本があります。『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』(最上悠、永岡書店2011)以前この本を読んだときは、書いてあることが医学研究の流れの中でどこまで本流になっていけるのか、ただの珍説なのか、私には判断がつきません…