最近読んだ本など

自分の中に鍵のある部屋を持つ

このところ更新がとてもゆっくりになっていますが、毎日どなたかがアクセスされているようで、そこへ向かって、あるいは未来の読者さんに宛てて、記事を書いていこうと思います。 今日は、この本についてです。 東畑開人『聞く技術聞いてもらう技術』(ちく…

気持ちに物語を載せると思いになり、思いを届けると思いやりになる

自分の気持ちがわかるようになる、という体験について最近書いています。楽しいとか嬉しいとか、悲しいとか悔しいとか、”感情”と呼んでいるものは、実は身体に起きている生体反応を拾って名前を付けているもの(諸説あります)で、同じような生体反応じたい…

苦しいときには苦しいと言おう

私は今まで自分の気持ちを言葉にすることに難があって、そのことをこのブログにも書いてきました。身体の反応だけがあって言葉が付いてこない様々な感情を、ゆっくり味わうことで言葉にできるようになるという体験を重ねてきました。 自分の気持ちに気がつい…

傷つくことと向き合うことが生きることの本質

複雑性PTSDという疾病名が、国際疾病分類(ICD-11)に記載され、2022年1月1日から正式に診断名として発効された、らしいです。この本を読みました。 『複雑性PTSDとは何か 四人の精神科医の座談会とエッセイ』(金剛出版2022年、飛鳥井望・神田橋條治・高木…

暴力の構造を掘り下げると咀嚼されない悲しみに行きつく

ニュースの話題が感染症から戦争に変わった感がある昨今ですが、ストレスフルな状況が続いていることには変わりないですね。 動物も何かをめぐって闘争を行うことはあるし、戦争には本能的な部分があるのだとは思うのですが、ヒトが行う戦争は際限なくエスカ…

階層に注目したら整理がついた

実母と義母は違うところが多く、いろんな意味で戸惑い、混乱を経験してきました。私が結婚するまでこれが普通、これが正しい、と思っていたことが、義母にとってはとんでもなくおかしいことだと感じられるらしく、私は義母の言うことに合わせようとすればす…

「嫌と言えない」が連鎖する

子守りというのは本当に大変な仕事で、泣いたりぐずったりする子どもをどうやって落ち着かせようかと困ってしまうのは誰でも似たり寄ったりだと思うのですが、そのときにどのような方法を使うのかは個人差というか、性格が出るところでしょう。 ひとつ前の記…

メンタライゼーションは空想と現実の間にある

他者の気持ちについて考えることをメンタライゼーションと呼ぶとして、話をすすめています。これは、いわゆる「思いやり」や「共感性」に関わることではありますが、メンタライゼーションというのは、悲しそうな人を見てなんとなく自分も悲しくなってしまう…

思春期の外傷体験から起こる慢性うつ

以前、外傷的な育ちとメンタライゼーションについて書きました(→過去記事)。今回はその第2弾ということになります。この本を読みました。 『メンタライゼーションを学ぼう』(池田暁史、日本評論社2021年) メンタライゼーションを学ぼう 作者:池田暁史 日…

眼球を左右にゆっくり動かすだけの眼精疲労対策

前の記事を書いた頃、ふと気が付くと、 いや本当にふと、あれ、そういえば、という感じで気が付きました。 体じゅうがんがんに凝り固まっていてどうしようもなく痛い状態になっていました。こんな風になるまでそこに意識がいっていないというのが、私のおか…

卑屈さから抜け出すキーワードとしてのコンフォートゾーン

結構ガツンときました。本をパラっとめくっただけで目に留まったフレーズにここまで衝撃を受けたことはもしかしたら初めてかもしれません。 もし何かに失敗したり、満足のいく結果が出なかったりしたときは、「恥ずかしい」ではなく、「自分らしくない」と考…

自分になにが起きているのかを理解できたとき責任を引き受けることができる

これまで私が 自分の期待どおりでないこと とか 嫌な体験 不快な出来事 などと書き表してきたことに名前が付けられているのに出会いました。 予測誤差 といいます。熊谷晋一郎さんが、トラウマというのは閾値を超えた強い予測誤差のことではないかという表現…

レジリエンスってそういうことでしょ

このところ発達性トラウマに”はまって”しまって少ししんどい感じになっていたのですが、ここ1か月で 抜けた! という感じになっています。 どういう風に変化があったのかを順序だてて整理したいと思います。書いておかないとこの感覚を忘れてしまいそうなの…

発達性トラウマで説明できるストレス性の病

以前紹介したポリヴェーガル理論に関して、『レジリエンスを育む』(キャシー・L・ケイン/ステファン・J・テレール、花丘ちぐさ・浅井咲子(訳)、岩崎学術出版社2019年)を読みました。 レジリエンスを育む―ポリヴェーガル理論による発達性トラウマの治癒 …

だんだん成長する自分をイメージできること

子育て関連の本を読んでいて、強烈に印象に残ったことがありました。 丸山美和子『小学校までにつけておきたい力と学童期への見通し』(2005年、かもがわ出版)にあった、系列化の思考についてです。 系列化の思考というのは、大きい-小さいなどの二極では…

発達障害、これなら納得

ブログ、2010年からやっております。 ブログを始めた当時の私の疑問は、発達障害は生まれか育ちかという問いでした。当時は、自閉症が母原病といわれ、母親が責任を追及されつらい思いをしたことへの配慮から、自閉症スペクトラムは生まれつきの障害ですとい…

感情を受け止める母親のリアリティ

柳美里『ファミリー・シークレット』を読みました。 カウンセラーとの対話を記録し、作者自身の家族と育ちを振り返るとともに現在の自らの子育てまでを描いています。 存在は知っていながら近寄ることができなかった作品ですが、今回手に取ることができたの…

発達障害と愛着障害とメンタルの病の繋がり具合

数年前、私は、発達障害と愛着障害が別個に語られることに居心地の悪さを感じていました。当時、発達障害は生まれたときに決まっている性質のようなもので、愛着障害が育ち方で決まってくる性格のようなものと説明されていたと思います。どうも納得がいかな…

アレキシサイミアと外傷的育ち

前の記事では感情がわかりにくい私がそれに気づき、感情をほどく方法について書いてきました。どうなんでしょう。私は自分がどのくらい特殊な人間であるのかがよくわかりません。でも、広い世界にたった1人でこんな状態でいるとは思いません。よく似た状態に…

でたらめ と へたくそ の違い

でたらめ から へたくそ へ 50代半ばから修士論文に取り組んだ私の支えになった言葉です。『論文作成のためのパソコン入門』(宇多賢治郎、学文社2008年)にあったフレーズですが、ずっと心の中に響き続けていました。 論文作成のためのパソコン入門 作者:宇…

過敏性腸症候群の理解が変わる食事療法

長らく更新が止まっておりました。お久しぶりです。 ここ数か月いろいろなことがあったのですがそのひとつが、過敏性大腸症候群の食事療法です。ストレスが重なっていることは承知のことでしたが、どうも最近それだけじゃなくて、食事を見直すことで状態が変…

ポリヴェーガル理論でさまざまな謎が解ける

ポリヴェーガル理論という名前を私は今回のCDブックで初めて知った、と思ったのですが、よくよく調べてみると、これまで買って持っていた本の中でも引用されていたり紹介されていたりしました。でも、提唱者であるポージェス博士の著書の邦訳は最近出たこ…

トラウマが消える音楽CD

聴くだけでトラウマが消える音楽CDというのを見つけました。にわかに信じがたく、迷いましたが思い切って買ってみました。 心の傷を消す音楽CDブック (聴くだけで不安・心配・悲観がなくなる) 作者: 藤本昌樹, 出版社/メーカー: マキノ出版 発売日: 2018/0…

せん妄は案外身近なことだと知っておくべき

義母(90歳)が脳梗塞で入院したとき、不穏な精神状態になって病院の廊下を歩き回ったり、点滴の針を抜いたりしました。面会時間以外にも家族が交代で付き添って話し相手になり周囲に迷惑がかからないよう随分気を使いました。これを私たち家族は認知症が進…

専門医を探すことから始まる概日リズム障害の治療

日本じゅうにどのくらいいるのでしょうか。概日リズム障害に悩む人。 概日リズム障害とは、睡眠障害の一種で、朝起きて夜眠るという生活リズムに障害が起きる病気です。 私の息子は不登校だった14歳のときから非24時間の睡眠パターンに陥り、目が覚める…

今向き合っているのが世間なのか社会なのかを意識するだけで変わる

「世間」と「社会」を区別して論じている方は演出家の鴻上尚史さんです。『コミュニケイションのレッスン』第2章によると、 世間=あなたと利害・人間関係があるか、将来利害・人間関係が生まれる可能性の高い人たち 社会=今現在、あなたと何の関係もなく、…

かなり健康になってきました。振り返ると。

以前、半健康とは、というような記事を書きました。長い間、身心の不健康な状態を続けており、元気になることは遠い目標でしかなかったのですが、 最近、かなりいい調子です。 朝起きたら、10分ほど屋外を散歩。月に一度はヨガ教室に行く。義母の菜園を手伝…

心理学の歴史を知ると見えてくる愛着理論の真実

ややこしい話が続いて恐縮ですが、わかりにくいけど大事なこともあると思うので書かせてくださいね。 ジョン・ボウルビィの「愛着」理論というのがありますよね。このブログでも愛着障害というカテゴリーを設けていますが、この「愛着」の英語は attachment …

親子の関係性から自閉症スペクトラムの症状が生まれるという仮説(2)

記事のタイトルには発達障害だけに関係するかのように書いていますが、実は少し違います。この本に書かれている仮説は、ASDのみならず、心身症や神経症、人格障害的なもの、解離、統合失調症的な精神疾患の全ての源に、乳児期の養育者との関係の歪み、ほぼイ…

親子の関係性から自閉症スペクトラムの症状が生まれるという仮説(1)

久々に発達障害の話題です。 自閉症スペクトラムの原因についての議論は、私がブログ『雨の日は本を広げて』を書き終えた2013年ごろと比べると研究レベルではかなりの変化がありました。最先端の遺伝子研究の結果を踏まえると、特定の遺伝子が自閉症をつくる…