最近読んだ本など

神仏習合のイメージをつかむことで今の日本人の信仰が見えてくる

明治維新以前の神仏習合というのはどういうものだったのか、イメージをつかむためにこの本を読んでみました。『神も仏も大好きな日本人』(島田裕巳、ちくま新書2011年)この本によると、東京付近では廃仏毀釈運動はあまり強くなく、廃寺となった寺もほとん…

よすがとしての郷土史

ちょうど宮崎に戻る機会があり、伊満福寺を訪れてみました。広大な敷地にたくさんのお堂や塔が建っていたとされ、明治維新期の廃仏毀釈によって破壊されたとされる伊満福寺。跡地のほとんどは宅地開発されたらしく、山頂に近い部分に寺地が残り、すぐそばか…

歴史に気づく衝撃

今までこういう歴史だと思っていたことが実は違っていたことに気づいて衝撃を受けたという経験はありますでしょうか。私は子どもの頃、親に昔は物がなかったとか、貧しかったとか言われて育ったので、日本は太古の昔から少しずつ順序よく豊かになってきたの…

大事なのは劣等感と向き合うこと

最近、真向法(まっこうほう)というボディワークを知りました。開脚や前屈のような骨盤まわりの柔軟体操を数種類組み合わせて毎日行うという非常にシンプルな健康法です。もともと身体が硬くて他の人と同じように出来ず、若い頃にずいぶん恥ずかしい思いを…

産みの親への強い思いはどこから来るのだろう

一つ前の記事で取り上げた『女が女になること』によると、母親が働いているか専業主婦かによって5歳時点での発達の差がみられなかったという研究があり、それが「三歳児神話」を否定する論拠となっているということでした(p.191)。親子関係というのは、働い…

根拠がないというのはまだわかっていないということ

愛着障害という呼び名はそれなりに浸透して、関連本も増えてきているようですが、これに関して、以前から気になっていることがありました。アタッチメント、幼少期に確立される、親と子の情緒的きずな。親がいない場合は代わりの養育者でも構わないけれど、…

外傷的な育ちというくくりで見える本質

なんだかすごい本に出会ってしまった気がしています。『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』(崔炯仁、星和書店2016)。 以前からこのブログでは連呼していますが、精神科の診断名は原因で分類されているわけではなくて、状態像の名前です。…

面白くて怖い地政学

お正月から佐藤優『現代の地政学』(晶文社2016)を読みました。 ロシアやヨーロッパで身につけた国際感覚で捉えた近未来の情勢予測が惜しげもなく書かれている本で、その鋭い分析力、根拠となる情報の厚さに圧倒されました。地政学という言葉は最近急激に使…

発達障害と気分障害と複雑性PTSDが同じフィールドで語られる日

お気づきのように、こちらのブログは発達障害をメインテーマとはしていません。 不登校を経験した息子は成人しましたし、彼についての詳細をここに書くことは避けなければならないでしょう。 私についても、自身の診断を気分変調性障害とし、それからの脱却…

複雑性PTSDの記述から見えてくるもの

ひとつ前の記事では大雑把に気分障害と書きましたが、気分障害のすべてが発達障害や複雑性PTSDから起こるということを言っているのではないです。ここでも注意しなければならないのは、気分障害というのも状態像の名前であって、ひとつの原因で起こっている…

発達障害の新たな知見−ダイナミックに変化していく個性として

以前”雨の日は本を広げて”というブログを書いていました。更新終了してからすでに3年以上経っているのですが、ここのブログより一桁多く読まれ続け、先日アクセス総数が40万を超えました。ありがとうございます。嬉しいと同時に、こうやって発信すること…

生きていく知恵としての「トランス」道

前回とりあげた『あなたは、なぜ、つながれないのか: ラポールと身体知』の中からもうひとつ、大事だと思ったことを書きます。 この作者が「トランス」という言葉で言い表している、意識が外と内の両方に向いている状態のことです。トランスというとスピリチ…

繊細さを磨き洗練させるという方向性

書店でふと出会ってしまう本があります。 引き込まれて、数ページ進んでは思いに耽り、読み終わるまで落ち着きませんでした。『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知』(高石宏輔、春秋社2015)読みやすい文体で自分のことを語りながら、人と…

世界の秩序感と健康

アーロン・アントノフスキーという人の考えた健康生成論と首尾一貫感覚(SOC:Sence of Coherence)というのを最近知りました。『健康の謎を解く ストレス対処と健康保持のメカニズム』(有信堂2001)。ストレスがあるから不健康になるという論法ではなく…

ヨーロッパ思想の「心身二元論」への誤解を解く

このところ「半健康」「不定愁訴」「慢性疼痛」「慢性疲労」などに関することをいろいろ調べていて、ひと月ほどでかなりいろんなことがわかってきました。ひとつ重大なことは、この病への理解が、いわゆる「心身二元論」の議論に引っかかってくるということ…

生き延びるための分析する力と俯瞰する力

分析する力と俯瞰する力をバランスよく使うことで、より高い問題解決力が身につく。 この数ヶ月、折にふれこの二つの力について思い起こしていました。もともとはこの本に出ていたことです。『学習の作法』(天流仁志、ディスカバー21)勉強の仕方を、「分…

感染症と免疫わかっていることわからないこと

免疫について勉強してみました。『あたらしい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで』(審良静男・黒崎知博、講談社ブルーバックス2014年)『新しい自然免疫学 免疫システムの真の主役』(坂野上淳、技術評論社2010)高校時代、生物は好きな科目でしたがそれ以…

セルフケアとしてのロルフィング

すっかり病人の生活になっています。 数ヶ月前はオペラの練習や塾講師のアルバイトで大忙しだったのが、まるで遠い昔のような気がします。感染症といっても、何か身体の深いところ、おそらく脳や神経系の部分に何か異変が起こったような気がしています。医師…

ヨーロッパの知識人を身近に感じる本

この本も以前から読みたいと思っていました。『歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア』(ウンベルト・エーコ、岩波書店2013年)イタリアの哲学者が書いたもので、さぞ難しい言葉で書かれているに違いないと覚悟して手に取りましたが、ウイットに富んだ…

歴史を俯瞰する目

この夏に読んだ本のことを、まとめて書きたいと思います。個別指導塾でアルバイト講師をやっているのですが、社会の夏期講習に合わせて読んだ本がこれ。 『日本史の考え方 河合塾イシカワの東大合格講座』(石川晶康、講談社現代新書2004年)受験生向けのよ…

エネルギーの流れが堰きとめられて抑うつになる

抑うつというのは、失望や落胆とか深い悲しみとか絶望感というのとは全く別のものです。 よく間違えられるし、抑うつに陥っている本人も区別できていないかもしれません。アレキサンダー・ローエンは、抑うつについてこのような表現を使っています。 「世界…

思い出が身体に記憶されている

身体が硬直したり筋肉に痛みやだるさがあったり、それをほぐすために自分なりに努力してきました。そのことはこのブログにもときどき書いてきたのですが、いつも不思議に思うことがありました。ほぐれるとき、旧い記憶が蘇るということです。 情景とともにそ…

逆転移を学んで少しだけ落ち着きました

このところ感情に振り回されています。私は以前、失感情症(アレキシサイミア)ぎみだった、と自分では分析しています。 特に、悔しいとか、失礼とか、そういう自尊感情を傷つけられたときの気持ちがわからない人だったと思います。なのに、最近はそういう種…

知識と意識

『日本の反知性主義』(内田樹編、晶文社2015)という本を読みました。反知性主義というのはアメリカ由来の言葉でもともとの意味というのがちゃんとあるものらしいのですが、この本に限ってはそれにとらわれず、反知性という言葉から連想するものを10人の方…

言葉のはじまりは人類独特の論理の誤りから?

音を聞いたらドレミが出てくる、というのは、音の高さに「なまえ」がついているということです。それは、私たちが特定の色調に「なまえ」をつけていたり、特定の事象に「なまえ」をつけていたりすることと同じです。つまり、絶対音感と呼んでいるものの正体…

音感の個人差がものの考え方の個人差に関係するだろうか

私はある偶然から、ヤマハ音楽教室に3歳半で通い始め、小学校4年生まで在籍しました。 ものごころついたときにはすでにメロディーをドレミで歌っていましたから、これを特別な「音感」と呼ぶことには抵抗があったのですが、世間で「絶対音感」が話題になるた…

勉強法と倫理感覚の関係

前回に続き、藤澤伸介『ごまかし勉強〈上〉学力低下を助長するシステム』『ごまかし勉強〈下〉ほんものの学力を求めて』(新曜社)の話を。著者は勉強法を正統派とごまかし勉強に大別し、ごまかし勉強が蔓延していると書いているのですが、それは保護者、教…

本当の学び方を取り戻す

ところで、数ヶ月前から塾講師をしています。アルバイトを始めたのにはいろいろ理由はありますが、なぜ塾講師を選んだのかという理由の一つは、塾というところを知っておきたかったということがあります。 私は学習塾に行かずに大学に入り卒業してしまったし…

人と人の間を図式化して家族を解く

日本文化の中では、人と人の間のつながりの感覚や力の上下関係、心理的な距離などを意識しながら動くことは当たり前だけれど、これが案外西洋文化の中では意識されていないらしいということを一つ前の記事で書きました。意識されたとしても、彼らの言語は一…

「義」の感覚は2階建ての1階にあるのだろうか

『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』の著者エドガー・H・シャインは組織経営学などを専門とする社会心理学者で、日本との文化の違いにも精通しています。この本には30ページ余りの分量で監訳者金井壽宏(神戸大学大学院…