発達障害と愛着障害

小さなパニックが私の人間関係にもたらしたもの

最近、生きやすくなったと感じています。 人と関わることが怖くなくなりました。相手にも気持ちがありますし、想定外の反応に傷ついたりします。でも、それは当たり前のこととして、受け止めることができるようになってきました。 先日60歳になったところ…

発達障害ってなんだろう

このところ更新が止まっております。眼の調子は少しずつ回復しパソコンも使えるようになってきたのですが、他の用事を優先しているうちにいつのまにやら日にちがたってしまいました。 以前書いていたブログ「雨の日は本を広げて」を限定公開しています。10年…

レジリエンスってそういうことでしょ

このところ発達性トラウマに”はまって”しまって少ししんどい感じになっていたのですが、ここ1か月で 抜けた! という感じになっています。 どういう風に変化があったのかを順序だてて整理したいと思います。書いておかないとこの感覚を忘れてしまいそうなの…

発達障害、これなら納得

ブログ、2010年からやっております。 ブログを始めた当時の私の疑問は、発達障害は生まれか育ちかという問いでした。当時は、自閉症が母原病といわれ、母親が責任を追及されつらい思いをしたことへの配慮から、自閉症スペクトラムは生まれつきの障害ですとい…

発達障害と愛着障害とメンタルの病の繋がり具合

数年前、私は、発達障害と愛着障害が別個に語られることに居心地の悪さを感じていました。当時、発達障害は生まれたときに決まっている性質のようなもので、愛着障害が育ち方で決まってくる性格のようなものと説明されていたと思います。どうも納得がいかな…

ポリヴェーガル理論でさまざまな謎が解ける

ポリヴェーガル理論という名前を私は今回のCDブックで初めて知った、と思ったのですが、よくよく調べてみると、これまで買って持っていた本の中でも引用されていたり紹介されていたりしました。でも、提唱者であるポージェス博士の著書の邦訳は最近出たこ…

感覚統合という見方で発達障害をとらえてみると

本棚の整理をしていましたらこの本を見つけました。 『これでわかる「気になる子」の育て方』(木村順監修、成美堂出版2010年) 今読み返すとうーんなるほど、実感があります。この本でグレーゾーンと呼ばれている子どもたちのことです。明らかに発達障害と…

心理学の歴史を知ると見えてくる愛着理論の真実

ややこしい話が続いて恐縮ですが、わかりにくいけど大事なこともあると思うので書かせてくださいね。 ジョン・ボウルビィの「愛着」理論というのがありますよね。このブログでも愛着障害というカテゴリーを設けていますが、この「愛着」の英語は attachment …

親子の関係性から自閉症スペクトラムの症状が生まれるという仮説(2)

記事のタイトルには発達障害だけに関係するかのように書いていますが、実は少し違います。この本に書かれている仮説は、ASDのみならず、心身症や神経症、人格障害的なもの、解離、統合失調症的な精神疾患の全ての源に、乳児期の養育者との関係の歪み、ほぼイ…

親子の関係性から自閉症スペクトラムの症状が生まれるという仮説(1)

久々に発達障害の話題です。 自閉症スペクトラムの原因についての議論は、私がブログ『雨の日は本を広げて』を書き終えた2013年ごろと比べると研究レベルではかなりの変化がありました。最先端の遺伝子研究の結果を踏まえると、特定の遺伝子が自閉症をつくる…

産みの親への強い思いはどこから来るのだろう

一つ前の記事で取り上げた『女が女になること』によると、母親が働いているか専業主婦かによって5歳時点での発達の差がみられなかったという研究があり、それが「三歳児神話」を否定する論拠となっているということでした(p.191)。親子関係というのは、働い…

根拠がないというのはまだわかっていないということ

愛着障害という呼び名はそれなりに浸透して、関連本も増えてきているようですが、これに関して、以前から気になっていることがありました。アタッチメント、幼少期に確立される、親と子の情緒的きずな。親がいない場合は代わりの養育者でも構わないけれど、…

外傷的な育ちというくくりで見える本質

なんだかすごい本に出会ってしまった気がしています。『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』(崔炯仁、星和書店2016)。 以前からこのブログでは連呼していますが、精神科の診断名は原因で分類されているわけではなくて、状態像の名前です。…

治療よりも知恵をさがしたい

実は私の方より夫の家系の方がずっと本来の意味でのASD素因的なんですよね。細密な技法を使う工芸師としてそこそこ成功した人をルーツに持ち、エンジニアとして企業に勤めた人がぞろぞろいる家系です。技術系で思考の緻密さに長けているように見えます。でも…

発達障害と気分障害と複雑性PTSDが同じフィールドで語られる日

お気づきのように、こちらのブログは発達障害をメインテーマとはしていません。 不登校を経験した息子は成人しましたし、彼についての詳細をここに書くことは避けなければならないでしょう。 私についても、自身の診断を気分変調性障害とし、それからの脱却…

複雑性PTSDの記述から見えてくるもの

ひとつ前の記事では大雑把に気分障害と書きましたが、気分障害のすべてが発達障害や複雑性PTSDから起こるということを言っているのではないです。ここでも注意しなければならないのは、気分障害というのも状態像の名前であって、ひとつの原因で起こっている…

発達障害の新たな知見−ダイナミックに変化していく個性として

以前”雨の日は本を広げて”というブログを書いていました。更新終了してからすでに3年以上経っているのですが、ここのブログより一桁多く読まれ続け、先日アクセス総数が40万を超えました。ありがとうございます。嬉しいと同時に、こうやって発信すること…

発達障害研究のまったく新しい時代の幕開け

2013年9月まで、発達障害に関するブログをやっていました。ブログを終えるころの結論の一つに、いろいろ本を読んだけれど、発達障害がどうやって起こるのかということに関しては、仮説の域を出ないものがいろいろ取り沙汰されているだけだということがあり…

人間関係にオクテであることは決してマイナスではないはず

本田秀夫『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体 (SB新書)』の中で、特に印象に残ったのが、 ルビンの壷のたとえを使った、地と図の切り替えの話でした。ルビンの壷というのは、見ようによっては壷にも人間の顔が向かい合っているよう…

自閉症スペクトラムはいわば人種のようなものだ、とすれば。。

発達障害のことを話題に出したついでに、この本のことを。『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』(本田秀夫、ソフトバンク新書2013年)著者は精神科医ですが、多数の症例を診た経験から、自閉症スペクトラムであること、と、自閉症…

ブラック企業と管理教育のどこが似ているのか

大学卒業を控えた息子がひとりいるので、巷の労働環境のことを知りたいと思いました。でもこの本で読む限り、これは私たちが若い頃に学校で行われていたことと本質的に同じだと感じました。手口はだんだん巧妙にはなってきています。『ブラック企業経営者の…

私にとって社会的なコミュニケーションを困難にしていたもの

以前のブログで私が一番気にしていた「発達障害」は、もっとも軽度の自閉症スペクトラム、広汎性発達障害とかアスペルガー症候群とか呼ばれる人、とくに大人たちのことでした。同じ「発達障害」といっても、幼児の自閉症を思い浮かべる人もいれば、小学生のA…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(4)〜親からもらった素質と自閉症の関係〜

わし鼻や一重まぶたなど、顔の造作の特徴は親に似るし、これが育て方によるものじゃなく遺伝であることはまず間違いないと思います。でも、同じような格好なのに、それが魅力的に見えるか、というのは、人柄やセンスによってずいぶん変わってしまうというこ…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(3)〜遺伝する自閉症と遺伝だけでない自閉症がある〜

ひきつづき、『自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書)』から。以前のブログをやっていた中で、遺伝か環境かというのは、大きな謎でした。 でも、精神科領域の診断は見た目の症状や特徴によって判断(分類)されるものであって、どうやって病気に…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(2)〜語用論の障害は自閉症だけじゃない〜

前回にひきつづき、『自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書)』からの話題です。やっと書いてくれた、と、嬉しかったのが、語用論のことでした。言葉を字義通りに受け取り、文脈から意味づけることができない。話し手の意図を読み取ったり、会話…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(1)〜5つの謎〜

2013年9月に更新を終了したブログ『雨の日は本をひろげて』のアクセスカウンターが、もうすぐ20万を超える見通しです。更新終了後も毎日たくさんの方が見に来てくださっていて、ありがたいことです。 (一日あたりの数として、このブログのざっと10倍ぐらい…

「無邪気な忘却」と名づけてみました

ひとつ前の記事の最後の方に書いたことですが、何かを学んで身につけたとき、できない状態からできる状態になったとき何を考えていたか、どんな感覚だったのか、といったことをうまく表現できなくなってしまうという現象があります。自転車に乗れるようにな…

こころの傷と文明について考えてみました

前々回、こころの傷から回復できなくなったり、傷があっても生きていくことができなくなった。その辺りのことを、書くと予告したのですが、これを書くのは難しいように思うので、しばらく保留にしたいと思います。こころの傷というのは、身体の傷とは少し性…

解離は脳と身体の中で起こっている

ところで、解離って何でしょうね。野間俊一『身体の時間』では、心的外傷のある人がフラッシュバックを経験するとき、「急激な生命的自己の反応に対して主体的自己がついていけず、両者のあいだにずれが生じている」(p.49)と書いてありますが、この「ずれ」…

解離していく現代と、発達障害の関係(2)

『身体の時間<今>を生きるための精神病理学』(野間俊一、筑摩選書)。前回にひきつづき、この本のことを書きます。この本で広汎性発達障害について論じられた部分は10ページちょっとなのですが、いろいろ大事なことが述べられているように思います。発達…