溺れたことのない人には溺れる気持ちはわからない

病気の話を少し書きます。

私は今、精神科クリニックから内科に移って、漢方で体力をつけていますが、
何年もの間、軽度の抑うつ状態が続いていました。転院するときの診断名は気分変調障害です。

うつ というと、ゆううつな気分、気分が落ち込む状態、と、まあ、普通にはそう理解されています。

だれにでもあることだと思います。おなかをこわしたり、風邪を引いたりするのとそう変わらないことです。日にちがたてば自然にからだの底から力が湧いてきて、よし、がんばろう、って思えるようになってきます。

それが、健康的な、うつ状態ですよね。

 
その、からだの底の力が、出なくなってしまうのが、病気でした。

感情が感じられなくなり、身体の調子がうまく整わなくなり、眠れなくなり、休めなくなり、断れなくなり、何が良いことなのか、何を選んだらいいのかわからなくなり、
ちょっとした計算もできなくなり、長い文章を聞くと混乱するようになり、
すっかり自分に自信がなくなり、毎日がだらだらと過ぎていくようになり、
このまま年をとって死んでしまうだけなのだろうかと思うようになり、
踏み切りに近づくと電車に吸い込まれそうな気分になり、、、、

こんな状態が何年も続くのが、病気のうつ、です。

 
健康的なうつ と 病気のうつ は似ていますが、違います。
もちろん、同じ延長線の上にはあるのだと思います。

海に行って、沖合いで溺れているのと、海辺で海水浴しているのが違うように、違います。

 
最近少し元気になってきたので、こういう病気だったんだよー、という話を親しい友達に話したりしていたのですが、

私も経験ある、とか、少しわかる、とか、そういう返事が帰ってくることが多いです。
共感してくれているつもりなのかもしれないけど、
少しがっかりします。わかってはもらえないんだな、と。

 
最近、腹の底から湧き上がる力が回復してきたのを感じます。ときどきうつにはなりますが、考えがまとまってきてすっと気分がよくなる瞬間があります。もう大丈夫だなと思います。
こんなうつなら、怖くないです。いつか良くなることがわかってるんだから。

当時はつらいという気持ちさえ忘れていた、くやしいとか、情けないとか、そういう感情さえなかった。あの頃のことをわかってもらおうとしても、

言葉にすればするほど、大袈裟だとか、言い訳しているとか、甘えているとか、
それぐらいの苦労は私もしてきたとか、もとの性格が悪いとか、根が暗いとか、
そういう風に思われるようなので、

わかってもらえなくて当たり前と思って、暮らしていくことにしようと思います。

もっともっと元気になって、本当はこれくらい根性があって明るい性格なんだよ、って思ってもらえたら、やっぱりあの頃は病気だったんだな、って、わかってもらえるかもしれないです。

ちょっと無理しすぎか(笑)。でも、くやしいっ!