「からだ」からこころを整えるというアプローチは古くて新しい

私がボディワークにかかわるようになったきっかけは、ある集会で「発達障害にはフェルデンクライスがいいらしい」という話をきいたことでした。

発達障害に関わらず、うつ状態など、こころの不調には身体を整えるといいというのは、日本人ならある程度受け入れ可能なんじゃないかと思います。整体院や各種体操関係のサイトにはこうこうこういうわけでこころの不調に効くということがいろいろ載っています。

ここで疑問です。

どうして、病院と名のつくところにいくとそういう話ができなくなってしまうんでしょうか。

なんだかわからないけれど、お医者さんの前では話題にしてはいけないような気分になってしまって、黙って薬をもらって帰ってくるのですが、どうなんでしょうね。
患者の方では、お医者さんでは飲み薬をもらい、一方では整体に通ったりボディワークを試したり、健康食品を注文したりということを黙ってやっているんですが、そのことを総合的に主治医に相談することができないんですよね。

話をしたとしても、変なのがあるから注意してとか、あまり効かないよとか、頭ごなしに否定するような返事しかもらえないことが多かったように思いますが、どうでしょうか。もちろん例外もあるとは思いますが、一般的にどの先生も民間療法には冷たいですよね。

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妙な本を見つけました。
ソマティック心理学『ソマティック心理学』(久保隆司、春秋社)心と身体をわけて考える心身二元論の考えかたを避けるさまざまな技法や理論を系統的に整理してあります。精神分析、神経生物学、ボディワーク、ダンスムーブメント、マインドフルネス、と網羅的に説明してあります。トラウマ治療として最近注目されている EMDR も、抱擁ホルモンといわれるオキシトシンもでてきます。

そうそう、確かに、これらは全部、心と身体をどうにかして統一的に扱おうとして考えられている何かだとひとくくりにすることができそうです。

この本の著者は、本の最終章にでてくる「インテグラル理論」というのを深く学んだ方らしいです。これはかなり難くて、いわゆるスピリチュアルというような次元も統一的に扱おうとしているようです。霊的という言葉をきくと拒否反応という人もまた多いですよね。お医者さんどころか友達にだってこの人にしゃべっていいかどうか迷います。
 
なぜ、迷うのか。
   
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ひとつには、
私たちが学校などで学んできた知識の中では、大前提としてこころとからだを分けることになっていたからだと思います。

物質としての身体をお医者さんは扱うのであり、わたしたちが主観的に感じる、自分自身の「からだ」のことは、お医者さんは何も知らない、知り得ないんですよね。お医者さんでもらう薬は物質としての身体に効く薬です。

整体やボディワークのような主観的な「からだ」に働きかける治療法には、知識を超えて、わたしたちが経験から学んだこころとからだの調和についての知恵が詰まっているように思います。その知恵の起源は古いですが、今となってはとても新しく、最先端といってもいい。
 
今までの医学と新しい理論を統一的に扱おうとすると水と油のように相容れない部分ができてしまうように思います。天動説と地動説のように、視点の問題であってどちらが正しいとか間違っているとかそういう問題ではないのだろうと思うのですが、それを切り替えていくのが難しいんじゃないかと思います。


もちろん、お医者さんは健康保険のきく治療法や診断名しか相手にしていないから、とか、民間療法と競合しているから、とか、そういう次元の理由もあるとは思いますけど、ね。