科学的根拠という言葉の意味

ところで、話を統計学に戻します。

医学の世界でエビデンス(科学的根拠)として信頼されているのは、ランダム化実験(RCT)であるという話がでてきました(→記事10/13)。また、この言葉は、統計学の一般的な信頼性の話の中でも出てきました(→記事11/06)。

ランダム化実験というのは、なんらかの条件が<ある>ときと<ない>ときを比較して、差があるかどうかを検証するというもののことです。
ビッグデータの時代になりましたが、データは全体からある程度無作為に抽出して比較すれば、全体のデータを比較したときとさほど違わない結果が得られます。

薬の効果などは、ある薬を使うときと使わないときで治り具合の差を見るわけで、「治験」と一般的に呼ばれているものは私たちもよく見聞きするものですよね。

一定の差が見られその差が偶然による誤差の範囲では考えにくいことを証明すると、科学的な根拠がある、ということになります。

ここで気がつくのは、
とすると、なんでも証明できてしまうということ。

たとえば、祈祷やおまじないの効果とか、人の好みとか、おおよそこれまで科学的とは思ってこなかったものまで、<科学的に>証明できるということです。

<科学的>というと、理系のイメージがあって、物理や化学で説明できる、からくりがわかっている、ということだと考えてしまうのですが、べつにからくりなど何もわかっていなくても、統計データさえあればよいということになります。

逆にいえば、専門家の書いたものに「科学的根拠がない」と書かれていたとしても、まったく信頼性がないとか迷信とかそういうことを意味しているわけではなくて、実験の実績がない、実験しにくいということを指している可能性もあるわけです。

「科学的根拠」というこの言葉の意味を正しく理解するためにも、統計学は役にたつようです。