「信頼」をつなぐスキルとしてのアサーション

私がこうやって自信をもって「信頼」について語れるようになったのは、ある研修プログラムに参加したことからです。

3時間ずつ4回の研修を受けました。心理学の言葉で言うところの、アサーションのワークのセミナーです。

アサーションというのは、適切な自己表現のスキルです。
特に相手に言いにくいようなこと、たとえば誘いを断る、怒りを伝える、叱る、といった場面で相手との関係を切らずに上手に自分の思いを表現し伝える方法を学びます。

具体的にこういうときどう言ったらいいか、という例題をグループで話し合いながら解き、どのように表現すればいいかを学んでいきました。

学びながら感じたのは、いかに自分が「察してちゃん」だったかということです。
相手に自分の思いがなんとなく伝わっていることを甘く期待していて、その結果、うまく伝わらないときは恨みに似た感情を持っていました。

あいまいな表現や言葉とは違う態度だけでは相手には伝わらないと割り切って、相手の気持ちに配慮しながら上手に断ったり、叱ったりできるようになってきました。

ある程度自己表現ができるようになってくると、人と話すのが怖いと思わなくなってきます。そして何より、自分に自信を持つことができるようになってきました。

基本的な自尊感情が高まってくるのを感じます。

私が研修を受けた講師の方の本ではありませんが、アサーションのテキストとしてこの本が読みやすかったので紹介します。

気持ちが伝わる話しかた―自分も相手も心地いいアサーティブな表現術『気持ちが伝わる話し方』(森田汐生、主婦の友社

これまでの私は、誤解されたなと思ってもそれを訂正することもできず、無理な誘いを断ることもできず、相手に期待されている自分を推測してはその虚像に合わせて話し方や話の内容を決めていたように思います。極端な言い方をすれば仮面をつけた自分として社会に交わっていました。でも、アサーションのスキルを身につけつつある今、はじめて自分自身として他人に向き合うことができるようになりました。

自分自身であってよいのだ、と、こころから思えます。

その自分自身が相手と思いがすれ違うとき、反発しあうとき、私は相手の気持ちに配慮しながら自分の思いを表現することができます。できつつあります。
誤解が解けたとき、反発の原因がわかって和解できたとき、相手との間には絆ができます。
絆は適切な自己表現の往復によって育まれるのだろうと思います。そうだとすれば、他人と思いが違っていることはなんら恐ろしいことではありません。むしろ喜ばしいことです。その人を深く知るチャンスだからです。

もっと早く、このスキルを知っておきたかったと思うし、また、私に似た大勢の人たちに、このスキルを伝えたいと思います。