資本主義が生んだ、法人というモンスター

この本をじっくり読んでいました。

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)『資本主義という謎「成長なき時代」をどう生きるか』(水野和夫、大澤真幸NHK出版新書2013)読みながら、これまでずっと考えてきたこと、世の中を見回しながら考えてきたこと、等をつらつらと振りかえっていました。

プロフィールにも少し書いていますが、私は政治経済学部の出身です。
戦争と平和、といった漠然としたことを考えて政治学科を選んだのですが、経済学と法学の講義には、違和感を感じてしまい、好きになれませんでした。

ひとことでいえば、「嘘くさい」ということです。
この本を読んでその感覚を思い出しました。私の感覚も的外れじゃなかったかもしれません。

資本主義とは何なのか、原点に返って問い直す試みになっています。初めに資本主義ありきではなく、何でこんなものが世の中に蔓延するようになったのかをさまざまな視点から考えていく。

法人とか利子とかいう概念がヨーロッパで発明され、世界中に広まっているという視点。ここ数十年の停滞が、16世紀ごろのヨーロッパに似ているという分析。漠然と感じていたことが理屈として整理されていく面白さがありました、

ある秩序のもとに安定した時代と、混乱や混沌の時代があり、混沌のあとには、以前とまったく違うものの考え方が一般化してくるという現象があります。今という時代は混沌の時代で、まさに次の時代への準備をしている産みの苦しみの中にあるのだろうと思います。

いちばん印象に残ったのは、「法人」という概念を受けいれる文化とそうじゃない文化があるということ。資本主義的なものが世界的に広がっている現代でも、よく見ていくと、法人格とリーダー個人の人格を区別して扱える人とそうじゃない人がいるように思えて、いろいろ連想が膨らんでいます。結局のところ、人類の歴史が法人として個人から切り離したものは、強欲の権化モンスターであり、この化け物をどう扱っていくかが私たちの課題なのかもしれないです。