自閉症スペクトラムはいわば人種のようなものだ、とすれば。。

発達障害のことを話題に出したついでに、この本のことを。

自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体 (SB新書)自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』(本田秀夫、ソフトバンク新書2013年)著者は精神科医ですが、多数の症例を診た経験から、自閉症スペクトラムであること、と、自閉症スペクトラム障害であること、を分けて考えることを提案されています。私が以前からブログで発信している疑問点にひとつの答えが出されたようで、嬉しいです。

本田氏の説明によると、
  自閉症スペクトラム   ==  医学的類型
  自閉症スペクトラム障害 ==  社会学的概念

ここでいうところの、社会学的概念というのは、支援が必要かどうかということを言っていると解釈しました。本の中には社会福祉制度とか、手帳とかいう言葉でも説明されているのですが、それを突っ込んで考えると別な問題に行き着くように思うのでそれは置いておいて、とにかく、本人が困っている状態にあって、医療を含めた社会制度に助けてもらう必要があるというのが、社会的な意味での「障害」。

それとはまったく別なものさしとして、純粋に生物学的な違いとして、
自閉症スペクトラムの特性を持っているかどうかを規定することができ、医学的類型として、自閉症らしさの濃い薄いで人を区別することができると考えられるということです。

この二つはシンクロしていません。
医学的には自閉症が濃くても社会適応の良い人、自閉症が薄いのに社会適応が悪く、支援を必要としている人がいます。このことは私が再三ブログに書いてきたことです。

本田氏は「私論」と断った上で、次のようなことを述べられています。

自閉症の特徴が強いために生活の支障が生じている群は「狭義の自閉症スペクトラム障害
自閉症の特徴は強くないが、うつや不安など併存する問題のために生活の支障がでている群をあわせたのが「広義の自閉症スペクトラム障害
そして、生物学的には自閉症スペクトラムでも、生活の支障なく社会適応している大勢の
  「非障害自閉症スペクトラム」が、存在する (pp.91-93より)

狭義の自閉症スペクトラムは生物学的な原因を持つもので、社会に一定の割り合いで存在するものですが、併存する問題のために支障がでる群(併存群)の割合は社会的な要因に左右されていると本田氏は指摘しています。彼らの社会適応の悪さの原因は決して「生まれつき」ではないのです。

そして、彼らが併存する問題を解決し、社会で普通に生きていくことができるようになったとしたら、その日から彼らは「障害」と呼ぶ必要もなくなるということです。「一生治らない」というのも間違いということになります。


自閉症スペクトラムの特性を持った人は世の中に大勢います。私が周囲を見回しても本当にたくさんいるなぁと思います。でも、彼らのほとんどは、平凡に市民生活を送っている普通の人たちです。本田氏は潜在的自閉症スペクトラムについて10人に1人という数を上げ、その半数以上が、成人期には非障害になる可能性があると述べています(p.113)。赤ちゃんのときから育ち方に特徴があり、育て方のコツもあるようです。この本にかなり詳しく出ているので参考になります。

それを参照する限り、私もやっぱり、10人に1人の生物学的な自閉症スペクトラムに入ってしまう、かな、と思います。身の回りの人間関係に対する関心が芽生えた時期が、周りの子どもたちよりずっと遅かったように思います。多くの子どもたちは自分と違う育ち方をしたのだと知ることは驚きではありますが、この本では「発達スタイル」のひとつとして認めているので、ほっとします。

自閉症スペクトラムであることは、人種や血液型の違いのような生物学的な違いだとも書いてありました。マイノリティであるというだけで強い劣等感を持つ必要もないし、それで自尊感情を損ねて二次的な問題をややこしくしてしまう必要もないのでした。

もっと、自分であることに自信をもっていいんです。私は、私らしくあってはじめて、私です。