同調圧力と世界の一貫性

アッシュという心理学者が行った同調圧力の実験を知っていますか。

ここには詳しく書かないので他のサイトを見に行ってください。多数出ています。
人の考えは周囲の人の言動に影響されることを証明した実験として有名です。

実は現役大学生のとき、この種の実験の被験者として実験に参加したことがあります。

狭めの教室にスライドスクリーンがあり、スクリーンを囲んで7、8人の被験者が入れられました。ランダムに置かれた黒い点の映像がほんの数秒映し出されて消えた後、点の数が10個より多かったか少なかったかを順に答えていくのですが、私が最後に答える順番でした。

他の人がどう答えようが、自分の感じたままに答えていたつもりでしたが、どう見ても少ないと思われるケースで他の被験者が「多い」と答えたりするので、この人たちがサクラなのではないかと気がつきました。しかし、それを意識すればするほど、自分の信じたとおりに答えることが難しくなっていくのです。

実験が終わった後ひどく混乱して席を立ち、主催者側の若い研究者が追っかけてきてお茶でもどうですかと誘っていただいたのを断って帰ってしまったのを覚えています。
あのとき私は、嘘をつかれた、裏切られたということに傷ついていたのではなくて、もっと深いところで世界の一貫性の揺らぎを体験していました。
自分が正しいと信じる根拠になっている判断力がこんなにも脆いものなのだという事実を突きつけられたような気がしたのです。

政治学科に入学したばかりで、人はなぜ戦争に巻き込まれていくのか研究したい、などと公言していた頃です。この実験の結果を見て、その答えは出てしまったような気がしました。他の人が皆間違ったことを言っていて、自分が正しいと確信を持てていても、間違ったことを言う人たちがサクラだと気づいてもなお、正しいことを正しいと言うことはこんなにも難しいのだ。。。


振り返って、結婚してからの私の25年は、ある大きな影響力の渦の中にあったことに気がつきます。主婦の役割、女性の一生についての義父母の考え方の影響です。義父母の周りにはそのきょうだいや知人がいて、私はあまり友達もいないという状況の中で、私の考えは違うと思いながらも、ずるずると、義母の歩んだような昔風の主婦らしい人生に引き込まれてしまっていました。そのときに感じていた世界の一貫性が崩れていく感覚は、学生時代に心理学の実験で感じたものと良く似ていて、ときどき思い出してもいました。

私は世界を見失い、自分を見失っていました。

私は女性としてどう生きたかったのだろうかと、もういちど問い直したいです。私なりの世界の首尾一貫性を取り戻したい。そうすることが私が健康を取り戻すことと直接結びついていると今は確信できます。