専門医を探すことから始まる概日リズム障害の治療

日本じゅうにどのくらいいるのでしょうか。概日リズム障害に悩む人。

概日リズム障害とは、睡眠障害の一種で、朝起きて夜眠るという生活リズムに障害が起きる病気です。

私の息子は不登校だった14歳のときから非24時間の睡眠パターンに陥り、目が覚める時刻が毎日2時間ぐらい遅くずれていく生活を10年ほど治すことができませんでした。2年ほど前から治療を始め、半年ほど前からほぼ正常なパターンで生活できるようになっています。

不登校やひきこもりに伴って起こる睡眠障害は、本人に治そうという積極的な気持ちが起きないと治療に取り掛かることができないため、長い間放置されてしまいがちなのだと思います。が、それと同じぐらい難しい問題は、専門医が少ないということではないでしょうか。

最初のうちは、精神科や神経内科などでどこででも診てもらえると思っていました。でも実際は、専門医でない場合、対応してもらえないわけではないけれど、睡眠薬などを出してもらってその場をしのぐということになりやすいというのがだんだんわかってきて、途方にくれたというのが本当のところです。

ふりかえってみると、この本に出会ったことに勇気づけられたと思います。

「極論で語る睡眠医学」(河合真、香坂俊、丸善出版2016)

極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ)

極論で語る睡眠医学 (極論で語る・シリーズ)

 

医学関係の人向けに書かれたと思われる内容なのですが、軽妙なタッチでとっつきやすく、睡眠障害についてどんなことがわかっていて、どんな治療ができるのかを知ることができました。専門医を探さなければだめだ、と強く思うきっかけになりました。著者の肩書きがスタンフォード大学睡眠医学センターとなっていて、日本でも同じようなレベルの治療が可能なのか、自分の家の近所で通えるようなところに専門医がいるのか、とても不安ではあったのですが、ここは、インターネットというものが普及してきて、時代に助けられました。

日本睡眠学会のホームページを探し、そこに登録されている医師のリストを見たわけです。家から通えそうな睡眠外来のある病院を見つけることができたことで、事態は大きく前進しました。

息子が受けた治療は認知行動療法的なものでした。自分で睡眠日誌をつけ、自己分析の力と自己コントロールの力をつけることで、睡眠障害は克服され、考え方も前向きに明るくなっていきました。変化はじわじわと起こり、2年ぐらいかかったと思います。睡眠薬は最初の方は少し出ていたようですが、ほとんど使いませんでした。

中学も高校もまともに通えなかった息子が、今は、週6日フルタイム勤務のアルバイトをこなしています。毎日同じ時間に同じ場所に通うというごく当たり前の生活ができていることが、本当に嬉しくて有難いです。

治らないと諦めかけている当事者や家族の方に、うちは治りました!とお伝えしたいです。学校の先生などには早く治してから来てくださいなどと言われたりして焦るかもしれませんが、年単位での治療が必要だと覚悟したほうがいいです。あせらず本人のペースで取り組むことが急がば回れになると思います。学校の先生には時間がかかる病気だという認識を持っていただければと思います。それと、もしできることなら、専門以外の医師にかかったときに専門医を紹介してもらえるシステムを整えていただきたいです。