薬は毒であり、毒は薬である

諸刃の刃(もろはのやいば)という言葉がありますね。

良い面もあるけど、悪い面もある。そんなものは、世の中にたくさんあります。

薬と毒も、そんなもののひとつですね。同じ物質が、薬になったり、毒になったりします。
適量なら薬、量を過ぎると毒というものが多いです。

毒と薬の科学―毒から見た薬・薬から見た毒『毒と薬の科学』(船山信次、朝倉書店)という本を読みました。いろんな毒について真面目に解説した本ですが、こんなものも毒?というものも結構ありました。

たとえば、塩。塩化ナトリウムですが、これも量を過ぎれば毒と言えるようです。カフェインには強い神経毒があり、一定量を超えれば命が危ないことは、どのぐらいの人が知っているんでしょうか。毒が薬だったり、食品が毒だったり。混乱を解決するポイントだと思ったのが、この文です。

毒としているのも薬としているのも、その「もの」に備わった属性ではなく、ある条件である量を使用したときの、ヒトの側から見た都合でしかない(p.5)

薬と毒だけじゃなくて、たいていの<よい>物と、<わるい>物の区別は、誰から見た<よい>なのか<わるい>なのか、という視点で見る必要があるんだろうと思います。見る人とモノとの関係性、その場の文脈によって、同じモノが<よい>ものになったり、<わるい>ものになったりしてしまうのだといえます。

絶対的に<よい>もの、その反対に、絶対的に<わるい>もの、って、そんなにたくさんはないだろうと思います。

 
私にはコーヒー過敏症があり、コーヒーを断るついでに「カフェインもある種の覚せい剤だからね」と理解を求めたりしてしまうのですが、どうも、この議論について来れる種類の人は少なくて、たいていの人が、自分の好きなコーヒーを馬鹿にされたような嫌な気分になるみたいです。<よい>ものと、<わるい>ものを、自分の中で区別しておきたい気持ちは人間には強くあるようです。
 
しっかりと区別する方が常識的だし、社会適応的だとも思います。でも、真実は見えにくいんじゃないかな。
 
まあ、私は飲まないんだから、飲む人を前にしてコーヒーの悪口は言わないようにしますが、

私の本音としては、別に悪口だとは思っていなくて、見方によって同じものがいろいろに見えることが面白いというだけです。やっぱり、ついてこれませんか?