症状は病気だったのかそれとも副作用だったのか

うつ病にかんする本を二冊記事にしました。抗うつ剤に関しては私は当事者だったので、本を読んでいろいろ考え込んでしまいました。(私の診断名は気分変調障害でした)

精神科の薬は強力に脳や神経に作用します。巷のドラッグといわれているものに相当する怖い薬であることはいちおう理解したうえで、それでも、危険を上回るメリットがあると信じているから飲んだわけです。

薬を飲んでいると症状がだんだん消えて楽になってくる、と、普通は思うじゃないですか。

私は、抗うつ薬気分安定剤を数年続けましたが、飲んでいる間に良くなったわけじゃないですね。今改めて思い起こすと、飲んでいる間はあまり症状に変化がなくて、良くなったのは薬をやめてからです。

これを常識的に考えると、うつ状態を改善するという意味では効いてなかったと思います。
専門家から見たらなんらかの意味があったのか、それはわかりませんが、一般の人にはわからないんじゃないかと思います。

病気だと思っていた症状が、実は副作用だった可能性もあります。

考えられないこと。覚えられないこと。計算ができないこと。言葉が綴れないこと。話の流れが読み取れないこと。これらのことは社会生活に大きな負担となり、家から出るのが不安になりました。自尊感情としても相当なところまで低下しました。

それから、強い筋肉の症状。朝目が覚めて意識が戻ってくると全身に痛みが走り起き上がるまでに一時間かかっていました。そして感情鈍麻。とくに悔しいとか失礼な感じというのがまったく失われていたように思います。

自殺したいというような思考が浮かぶことはないのに、踏み切りに近づくとふらふら〜っと線路に誘い込まれてしまうような感じになって、しっかりしなきゃ、と思ったことは何度もありますが、これは何だったんでしょうか。

あの苦しみは病気のせいだと思っていたのに、もしかしたら薬のせいだったかもしれないと考えると、全身の力が抜けてしまうような無力感を覚えます。あの数年間は何だったのだろうかと。


これはもちろん、いまただちに結論が出ることではありません。でも、これだけは言えます。抗うつ剤を飲み続けるだけで、うつ状態がどんどん良くなってくるなんてことはありません。抗うつ剤という薬はそのような夢の薬ではないです。

追い詰められ、わらをもつかむ思いでたどり着いた精神科クリニックですすめられる薬は、どんな薬でも当初は一定の効果はあるのかもしれません。うつ病の場合、砂糖玉の偽薬でも3割の人に効果があると書いてありました。症状の程度をたずねた質問紙の回答で点数が上がるという意味で、完治するという意味ではありませんが、誰かが自分の苦しみをわかってくれると感じられるだけで、少し楽になる、そんな極限の状況にあるわけです。

まじめに飲み続けた薬が、だんだん自分の身体と心を蝕んでいたとしたら。
副作用を症状と見間違ったために、長々と処方されていたとしたら。
もしそうだとしたら悲しいですね。過ぎた時間は取り戻せないです。


うつ病の知識が広まったおかげで、偏見を持つ人が減った一方で、病気を安易に考える人も増えたように思います。
いい薬ができたので簡単に治るようになった、とか、完治したら元通りにバリバリ働けるとか、そういう風に思われて面食らうことが多いです。

精神科治療薬の問題は、ぜひ多く人に共有してもらいたいし、一緒に考えて欲しいと思います。