人と人の間を図式化して家族を解く

日本文化の中では、人と人の間のつながりの感覚や力の上下関係、心理的な距離などを意識しながら動くことは当たり前だけれど、これが案外西洋文化の中では意識されていないらしいということを一つ前の記事で書きました。意識されたとしても、彼らの言語は一人ひとりの人間を主体としているので、人と人とで何かがやり取りされるという形になってしまうみたいですね。紹介した本の中でも「社会的通貨」という表現がされていました。

上手くいえませんが、日本人どうしの場合はもっと繊細な、<あいだ>の感覚があるように思うのですが、どうでしょう。

家族心理学特論 (放送大学大学院教材)そんなことを考えているちょうどそのタイミングで、今期の放送大学で勉強していた『家族心理学特論』(亀口憲治)の中に興味深い図を見つけました。
FIT図というものです。
家族療法で使われる手法で、家族の成員の力関係や距離感などを丸や線を使って図に表します。興味のある方は、テレビの放送授業でもやっていますので見てみたらいいですが、ネットには出ていないと思います。こういうものはネタばれになると実際受けてみる人に余計な影響が出るとのことで公開されていないもののようです。

とにかくそのFIT図というのは、家族なかにある<あいだ>の感覚を図式化してしまうという代物で、とても日本的なにおいがするものです。日本の研究者が開発したもので、最近は外国でも使われているそうです。

これは強力だと思いました。

私は子どもの不登校を経験しているわけですが、この講義を通して、自分の家族に何が起こっていたのかもう一度向きあうことになりました。これまで漠然と感じていた、家族の中の力関係のもつれ、こじれ、アンバランスといったものがはっきり意識され、それが少しずつ変化して今に至ることをかみ締めるように確認しました。

こころの科学 176号 特別企画:家族療法とブリーフセラピー家族療法というのは家族の力を高める働きがあり、学校に何も働きかけなくても不登校が改善したり、引きこもりに効果があったりするもののようです。このあたりは、雑誌『こころの科学』特集:家族療法とブリーフセラピー(日本評論社、2014年7月号)に出ていました。私たちの家族も家族療法を受けられたら良かったのにと悔やまれます。

今、日本のどこで家族療法(家族カウンセリング)が受けられるかは、次のサイトに出ていますので参考に。家族心理.com 家族療法機関一覧
まだ少ないですが、どんどん利用されたらいいと思います。

不登校の場合、病んでいるのは不登校の子どもじゃなくて、家族、家族の中の関係性なんだろうと思います。
ついでにいえば、学校側にも、学級内の関係性の膠着が生じているだろうと思います。
<あいだ>を意識的に見ていくことで解決できることがたくさんありそうです。

これを発展させていくと、国と国の<あいだ>にもFIT図のような力と距離の関係図がかけるし、国際紛争を解決するために活用するなんていうこともできるのかもしれません。