最近読んだ本など

人と人の力関係の暗黙のルールをことばにする

無いものが無いと気づくのは、それが世の中にあるということが認識できて初めて可能です。 知らないものは最初から在るか無いかもわからないのであり、それが在るという状態を知って初めて、「無い」と言えるわけなんですよね。私が今、昔の私に「悔しい」が…

「悔しい」と「妬ましい」は違う

私には長い間「悔しい」という感情が無かったという話を前回書きました。 そういえば、小学校4年生のとき、合唱コンクールで予選落ちしたとき、他のメンバーが顔をぐしゃぐしゃにして泣いているのに、私だけ涙がでなくて、先生に嫌味を言われたのを覚えてい…

発達障害研究のまったく新しい時代の幕開け

2013年9月まで、発達障害に関するブログをやっていました。ブログを終えるころの結論の一つに、いろいろ本を読んだけれど、発達障害がどうやって起こるのかということに関しては、仮説の域を出ないものがいろいろ取り沙汰されているだけだということがあり…

背面を開いて前屈

オペラ初挑戦に当たって、まず声作りから取り組んでいます。 なにはともあれ、本番で声が出なくなったら、みんなに迷惑をかけてしまいます。 力まず、遠くまで通る声が出せなければ話にならないのです。『声の呼吸法』(米山文明、平凡社2003)この本を読み…

何かになりきることで自分を表現できるドラマセラピー

実は、来年、小さなホールでオペラに出演することが決まっています。準主役です。音大も出ていないし、本格的に声楽の先生についたこともない私が、どうしてこういうことになってしまったのか、そのあたりは省略します。とにかくやることになってしまいまし…

この国は何を目指していくのかを考えるための本

放送大学の夏休みに、今年は、この本を読んでいました。『この国のかたち一〜六』(司馬遼太郎、文芸春秋1990〜1996、文庫化されています)私は歴史小説のファンではなく、この方の作品もほとんど読んでいないのですが、これは小説ではなくて、雑感をまとめ…

自閉症スペクトラムはいわば人種のようなものだ、とすれば。。

発達障害のことを話題に出したついでに、この本のことを。『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』(本田秀夫、ソフトバンク新書2013年)著者は精神科医ですが、多数の症例を診た経験から、自閉症スペクトラムであること、と、自閉症…

顔を緩めると、どうしてなのか骨盤底が緩んできた

ロルフィングというボディワークがあります。 その関係で以前から購入していた本ですが、あまり読みすすめることなく置かれていました。こういう本は読める時期が来たら読めるというものなのかもしれません。『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』(藤…

ブラック企業と管理教育のどこが似ているのか

大学卒業を控えた息子がひとりいるので、巷の労働環境のことを知りたいと思いました。でもこの本で読む限り、これは私たちが若い頃に学校で行われていたことと本質的に同じだと感じました。手口はだんだん巧妙にはなってきています。『ブラック企業経営者の…

資本主義が生んだ、法人というモンスター

この本をじっくり読んでいました。『資本主義という謎「成長なき時代」をどう生きるか』(水野和夫、大澤真幸、NHK出版新書2013)読みながら、これまでずっと考えてきたこと、世の中を見回しながら考えてきたこと、等をつらつらと振りかえっていました。プロ…

日本の臨床心理界の特殊な事情

この本を読みました。『セラピスト』(最相葉月、新潮社2014)ノンフィクションの作品として臨床心理の世界を描いています。日本だけの事情も踏まえて、日本人の、専門家ではない人の目を通して書かれていることで、見えてくるものがあると感じました。日本…

「信頼」をつなぐスキルとしてのアサーション

私がこうやって自信をもって「信頼」について語れるようになったのは、ある研修プログラムに参加したことからです。3時間ずつ4回の研修を受けました。心理学の言葉で言うところの、アサーションのワークのセミナーです。アサーションというのは、適切な自己…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(4)〜親からもらった素質と自閉症の関係〜

わし鼻や一重まぶたなど、顔の造作の特徴は親に似るし、これが育て方によるものじゃなく遺伝であることはまず間違いないと思います。でも、同じような格好なのに、それが魅力的に見えるか、というのは、人柄やセンスによってずいぶん変わってしまうというこ…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(3)〜遺伝する自閉症と遺伝だけでない自閉症がある〜

ひきつづき、『自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書)』から。以前のブログをやっていた中で、遺伝か環境かというのは、大きな謎でした。 でも、精神科領域の診断は見た目の症状や特徴によって判断(分類)されるものであって、どうやって病気に…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(2)〜語用論の障害は自閉症だけじゃない〜

前回にひきつづき、『自閉症という謎に迫る 研究最前線報告 (小学館新書)』からの話題です。やっと書いてくれた、と、嬉しかったのが、語用論のことでした。言葉を字義通りに受け取り、文脈から意味づけることができない。話し手の意図を読み取ったり、会話…

自閉症スペクトラムへの素朴な謎に答える本(1)〜5つの謎〜

2013年9月に更新を終了したブログ『雨の日は本をひろげて』のアクセスカウンターが、もうすぐ20万を超える見通しです。更新終了後も毎日たくさんの方が見に来てくださっていて、ありがたいことです。 (一日あたりの数として、このブログのざっと10倍ぐらい…

占領を知らない子どもたち。でした

放送大学の講義は4月〜7月の前期と9月〜1月の後期に分かれています。お休みの間にまとめて現代史(戦後史)の本を読んでいます。原爆や空襲の話は結構聞かされきたと思うのですが、占領期のことをあまり知りません。GHQがいた時代って、どんな感じだった…

論文とは何か、何のためにあるのか。

論文は、本屋さんや街の公共図書館で見かけることはあまりありません。一般の人の目に触れる場所にはないものです。ときどきニュースで、学者が新しい研究発表をしたという情報が流れますが、そのときは外国の論文雑誌に載った、ということが、さも凄いこと…

論文コンプレックス!一歩前へ

大学を出たということはイコール卒業論文を書いたということになるはずなのですが、私には長いこと論文コンプレックスがありました。自分が書いたものが果たしてあれで論文といえるものだったのか、まったく自信がなかったからです。 見よう見まねで、こんな…

特攻隊の基地が宮崎にもあった

私の祖父は、戦時中空港で働いていました。飛行機の整備をしていたと聞いています。本人は私が高校生のとき亡くなったこともあり、詳しい話を直接きいたことはありません。空襲が激しくなって母の家族が近郊の農家の離れに疎開したときも、祖父はその疎開先…

精神の病を経験した者として発信していくことの意義

私が精神科クリニックに通っていた時期は、ちょうどうつ病のキャンペーンがテレビで流れ、新世代の抗うつ剤が夢の薬のように言われていた頃と重なります。しかし2010年を過ぎたころから、抗うつ薬について、その効果そのものを疑うという書かれ方をしたもの…

日本のうつ病ブームをグローバリゼーションの流れで捉える

2000年ごろから10年ほどの間に、うつ病はあっという間に身近な病気になりました。それ以前のことを知らない、忘れたという人も多いかもしれませんね。キャンペーン以前のうつ病は、ごく一部の人がかかる怖い病気、ということになっていました。精神病になる…

不登校も自殺も社会問題だという視点を捨てないで

私は2002年ごろから6年ほど精神科領域の薬の世話になっていました。 「うつは心の風邪」というキャンペーンが張られ、うつ病の認知度が上がり、街に精神科クリニックの看板が増えてきた時期と重なります。その時期の精神科医療について書いた本を二冊読みま…

価値の遠近法とその方向性

鷲田清一さんの『語りきれないことー危機と痛みの哲学』(角川oneテーマ21)で私が一番印象に残ったことばは、「価値の遠近法」でした。1.絶対に手放してはいけないもの、見失ってはいけないもの 2.あったらいい、あってもいいけど、なくても構わないもの…

縁という発想と南方曼荼羅

ところで、縁というのは仏教の言葉で、日本人にはなじみ深いものですよね。一期一会という言葉を座右の銘にしている人も多いし、偶然の出会いには何らかの深い意味があると考え大事にする人が一定数います。 先日の、二階建ての哲学の話にもどると、 この偶…

二階建ての哲学という問題提起をしてみます

漢方に限らず、日本にはそれなりに体系化された伝統療法がありますよね。おばあちゃんの知恵として家庭で言い伝えられてきたようなものを民間療法と呼ぶならば、その範疇を超えて、専門家の養成方法が確立され、伝書が読み継がれ、手法が確立しているものが…

漢方薬にはエビデンスがないといわれる理由〜のつづき

1ヶ月ほど前の、漢方薬のエビデンスの話に戻ります。先の記事(→記事10/13)では、RCTは薬剤単独で評価するから、生薬を組み合わせる漢方では相性が悪いというようなニュアンスのことを書きましたが、実際は、漢方薬は○○湯とか△△散といった生薬の組み合わせ…

オープンコースウエアで統計学を学べます

前回紹介した『統計学が最強の学問である』は、統計学リテラシーを養う本でした。統計学をどんなときに使うのか、どういう意味があるのか、あらましを知ることができます。もう少し踏み込んで統計学が使えるようになりたいという場合は、地味な勉強がある程…

クールな議論のための統計学

この本を読んでいました。『統計学が最強の学問である』(西内啓、ダイヤモンド社)。書店でも人気で話題になっている本のようですが、確かに面白かったです。私はとりあえず専門として臨床心理を学ぶにあたって統計学が必要だったわけですが、最近は多方面…

漢方薬にはエビデンスがないと言われる理由

「標準治療」という言葉を検索してみたら、風邪症候群の標準治療についてまとめたページを見つけました。急性上気道感染症 治療法ガイドライン http://www.ebm.jp/disease/breath/01jokido/guide.htmlこれを見て、ああなるほど、と、思い当たることがありま…